第143章 結婚することになった

有岡里穂だって、本当はこんな話を持ち出したくなかった。けれど、何もかも持っている阿部蓮太郎に対して、自分が差し出せる切り札はたったひとつしかない。

――自分の医術。

「でも安心して。正式に結婚する前に、先に契約書を作ろう。もし離婚しても、あなたの財産は一切もらわない」

有岡里穂は、冗談抜きの顔でそう言った。

阿部蓮太郎は淡い瞳をすっと流し、低く静かに返す。

「俺のものは、やりたくないなら誰にも取れない。だが俺がやりたいなら――全部、持っていけ」

有岡里穂はその意味を理解した瞬間、目を輝かせた。

「じゃあ……同意してくれるの?」

阿部蓮太郎は彼女を見据え、瞳の奥を沈める。

「...

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